ブレイクスルー感染(新型コロナウィルスワクチン接種後感染)について
最近ブレイクスルー感染という言葉を新型コロナウィルス感染症に関連して時々目にしまた聞くことも多いです。これはどういうことを言っているのでしょうか。日本語に直すと〔打ち破る〕という意味から「打ち抜き感染」わかりやすく言えば「ワクチン接種後感染」とも言われます。以前から麻疹やインフルエンザウィルス感染症でも起こることは知られていました。新型コロナワクチン接種を2回受けた人はウィルスの感染暴露を受けても殆どの人が無症状かあっても軽症で済んでしまいます。これがクラスター発生の原因になっている可能性が高いのです(多くはありませんが)。新型コロナワクチンを2回接種して2週間から3週間でコロナウイルスを中和する抗体が十分にほぼ94から98%の人に出来て来ています。しかし、時間の経過ともに抗体価は減少して来ると言われています。この中和抗体(SARS-CoV-2抗体・・・スパイク蛋白と言います)をと当院でも数は少ないですが複数人測定しています。中和抗体は0.8未満を陰性としていますが3週間後一人目は2回接種後3300まで上昇しました。二人目は460の上昇で、2人目は1回目でアレルギー反応が強く出たため2回目は未接種で27でした。4人目は3700まで上昇が認められました。また、当院の例ではありませんが抗癌剤治療中の患者さんでも800程度まで上昇していたようです。しかし、1人目は接種後3ヶ月後も検査しその値は460まで下がっていました。報告によればほとんどの人が3から6ヶ月後には抗体価は85%減少すると言われておりほぼそのレベルに低下していました。抗体量がかなり下がってしまった場合コロナウイルス感染受けた時にブレイクスルー感染を起こしてしまうと考えられます。しかし、身体の中では免疫を担当する細胞にワクチン接種の記憶が残っており直ちに抗体を作り始めます。これがブレイクスルー感染者が軽症で済んでいる理由とみられます。少し前にイギリスで大規模なサッカー試合にコロナ陰性証明またはワクチン接種証明書を提示した人を対象に会場での観戦を認めたことがありました。ここでもブレイクスルー感染が発生しており感染を阻止出来ませんでした。ブレイクスルー感染は症状が軽度なため発見が遅れる可能性があるのです。従ってワクチン2回接種して自身の感染や重症化はかなりの確率で防げたとしてもブレイクスルー感染でクラスターを起こし感染を拡げてしまうことも考えられます。今後も基本的な感染防止策を続けることは非常に重要です。これらのことがうまく回っていけば感染収束の目処が立ってくるのではないでしょうか。