睡眠障害・不眠症
睡眠は生命維持に不可欠な生理現象ですがその仕組は完全には解明されていません。研究によると脳を取り囲む膜組織で作られる酵素が睡眠を調節するホルモン様睡眠物質”プロスタグランディンD2”を産生することが分かりました。つまり疲労が貯まると脳幹部にある睡眠中枢が刺激がされ睡眠物質が産生されてくるということになります。アフリカの古くから広範囲にある風土病に”眠り病”という病気があります。ツェツェ蝿が媒介する寄生虫トリパノソーマが引き起こす病気です。これにより年間10万人が死亡します。その経過は発熱し神経症状が出てこんこんと眠り続けます。脳に入り込んだトリパノソーマが考えられない程のプロスタグランディンD2というホルモンを作り出すことが証明され眠り病の機序が分かってきました。
睡眠は体の活動だけではなく脳の活動も休止させ高等動物においては発達した大脳のオーバーヒートを防ぐ役目もあるのです。よく知られている働きとしては1)疲労回復2)痛みを軽くする3)不安や悩みを忘れさせる4)ストレスを解消させる5)記憶を止め確実にする等があるでしょうか。また、成長ホルモン分泌や免疫力は夜間、睡眠中に高まるとされています。睡眠は日周期リズムと言ってほぼ24時間周期で繰り返される現象の一つです。体温の下降期に睡眠は始まり、最低体温からの上昇期に覚醒すると言われています。したがって入眠期には一枚身につけるものを脱ぎ体温下げやすくすることで眠りにつきやすくなるでしょう。
睡眠についての誤解の話・・・睡眠についての都市伝説は多いです。
1)成長ホルモンGHは深く眠ると分泌が増える・・・☓
夜眠る子は育つ、と言われていますが夜ふかしすると睡眠習慣の悪さが成長ホルモンGH分泌に影響し不足して成長が悪くなるということはありません。睡眠不足になるとその後に深く眠ったときに多く分泌され結果的に一日に作られる量はほぼ同じになります。但し、睡眠不足や夜ふかしは健やかな成長としつけに問題を起こし心身の健康に悪影響を及ぼします。即ちGHが出なくなって身長の伸びが止まるというのは言い過ぎです。
2)午後10時から12時の間に眠らないとGH分泌が悪くなり肌荒れする・・・☓
成人では男性の場合眠って初めてGH分泌が高まりますが女性では夜10時ころになると眠らなくてもGHはたくさん分泌されます。体調が悪いと肌荒れしますが睡眠時間帯のちょっとしたズレで起こることはありません。 3)血糖や血中脂肪が高いとGHは抑制される・・・◯
夜遅くに食べることのほうが睡眠以上にGH分泌に影響します。育ち盛りの子に夜食はあまり好ましくありません。
4)睡眠不足は太りやすくなる・・・◯
睡眠不足は食欲増強ホルモンであるグレリンを増やし食物に対する欲求を高め、満腹ホルモンであるレプチンの分泌低下を起こし満腹感の得られない状態を作り出します。脳と身体に睡眠不足の影響が出てくるとそれによる消耗を防ごうとものを食べよ、という司令になるのです。
睡眠障害対処のための指針 厚生労働省の12の指針
1)睡眠時間は人それぞれであり昼間の眠気で困らなければ十分である
2)刺激を避け自分なりにリラックスする
3)眠気を覚えてから就寝 就寝時刻はこだわらない
4)何時に寝ても毎日同じ時刻に起きる
5)朝起きたら十分な日光浴びる
6)規則正しい3度の食事と規則的な運動習慣を
7)昼寝は3時前に長くても30分以内にする
8)浅い眠りを感じたらむしろ遅寝して早起きで
9)睡眠中の激しいいびきや無呼吸はなどは要注意
10)長時間の眠りでも昼間眠気強い時は受診する
11)睡眠薬代わりの寝酒はしない
12)睡眠薬・導眠剤は医師の指示のもとで
一般的な睡眠のための対策を採っても眠れないという訴えがあるでしょう。この場合は睡眠薬の出番となりますが出現してからこれまで経過や不眠のパターンによって処方される薬も異なるでしょう。しかし、皆さん薬なしで自然な眠りに付きたいと感じていると思います。投薬してもそこから離脱できるようにお手伝いできればと考えています。
この他にも不眠症の原因にはたくさんあります。ストレスなど心理的な問題やうつ・うつ状態など精神的な問題、カフェイン、アルコールなど、また、投薬された薬の副作用、睡眠時無呼吸症候群、気管支喘息といった身体疾患等など多岐に渡たりますのでご相談下さい。